省エネのプロが解説【2024年】省エネ計算ツール
近年、省エネ適合判定(省エネ適判)に向けて省エネ計算への需要が高まっています。省エネ制度も適判にむけて整備が進んでおり、国土交通省が主体となってオンライン講座(ビデオ)及びテキストを配布しています。建築設計に関わる建築士の方々も、こうした流れでご自身で計算したり、提出する方法について検討しておられるものと思います。そこで、省エネ計算を2006年から19年に渡り専門にしてきたプロの視点できっちり解説いたします
住宅と非住宅で計算方法が異なる
大前提として、住宅と非住宅では省エネ計算の方法が全く異なるため、同じツールを使うことはできません。ほとんどの省エネ計算ソフト・ツールがそもそも分かれています。例えばA-repoシリーズでは、A-repo建築(非住宅)とA-repo住宅(住宅)といった具合です。このように建物用途によって基準も計算方法も異なるため、それぞれの省エネ計算ソフト・ツールを用いる必要があります。
ALL・IN・ONE【有料】省エネ計算ソフト
株式会社イズミコンサルティング A-repo/エーレポ
株式会社建築ピボットSAVE-建築/SAVE-住宅
有料で購入できる省エネ計算ソフト(ツール)としては、これら2社になるでしょう。
A-repo/エーレポ
サブスクリプション契約で、年間198,000円~396,000円となっています。年間を通してかなりの件数や案件での省エネ計算を行う設計事務所をターゲットにしているようです。かなりの案件数で省エネ計算を行う場合、作業内容が重複する細かな部分での簡略化・時短が求められ、そうした要求に答えてくれるソフト・ツールとなっています。
ピボットSAVE-建築/SAVE-住宅
こちらは単体購入版となっており、単体330,000円~594,000円となっています。購入単価が上がりますが長く用いていく場合は理想的と言えます。バージョンアップにも対応しているようです。ピボットSAVEシリーズにせよ、やはり年間案件数が多い事務所向けというイメージです。作業をより効率的にしていくことを求めるなら、有力なツールとなります。
こうしたオールインワンソフト・ツールのメリットとして、外皮や一次エネルギーなどの計算はもちろん、出力機能まで備えており、省エネルギー計算に加えて届出書類作成まで一括トータルで支援してくれるところにあります。
住宅の省エネ計算サポートツール
ここでは、住宅の省エネ計算を行う際に使えるサポートツールをご紹介します。これらのツールはどちらかというと、省エネ計算を理解している人が用いるものです。それで、サポートツールとしています。とはいえ、完成度の高さはやはり大手メーカー。施主さまへの省エネ性能説明書、提案書などの書類作成はもとより、各申請書類として使える計算書にもできます。仕様基準や標準計算ルートまで対応しています。
YKKAP住宅省エネ性能計算ソフトhttps://www.ykkap.co.jp/business/gaihiweb/
LIXIL省エネ住宅シミュレーションhttps://www.biz-lixil.com/service/proptool/shoene/
さすがは窓の会社。窓で省エネ・快適さが決まるとアピールして自社の開口部製品を利用してもらうことを前提に、それぞれ計算ツールを提供しています。この2社の開口部を使うことが多い場合、そうした製品が選択できるようになっているのもおすすめポイントになっています。逆に、一部YKKAPを使い、ある部分でLIXILを使うこともあります。そうすると、どちらかの開口部のデータを入手する必要があり使いづらく感じるかもしれません。
非住宅省エネ計算ツールは存在しない
上記でお伝えしたように、住宅と非住宅では省エネ計算の方法も基準もまったく異なります。住宅のサポートツールは窓の会社から無償提供されていますが、非住宅の省エネ計算ツールは無償で手に入るものはありません。
代行業者を選ぶメリット
省エネ計算は有料ソフトも無料ツールも存在しますが、専門知識や経験が求められる複雑な作業です。様々なデザインや部材が使われるため、単純とみられる建物でも詳細を詰めていく作業や計算時の判断が複雑に分かれています。正直に言うと、プロでも判断が分かれたり、審査機関や行政の担当者によって計算方法が変わる部分も多々あります。少しはじめてみたものの、やはり判断が難しい箇所があり、代行業者に依頼するというパターンもあります。
時間と労力の削減という面でも、代行業者を使うメリットがあります。一般業務がある中で省エネに関わる計算方法を学んだり、時間のかかる作業がかなり負担になる場合があります。ちいさな住宅でさえ、週末の1,2日でやってしまえるほど簡単な作業ではありません。省エネ計算は分岐が多くあるため、すべてをやり直すようなミスも多数存在します。そのため提出期限、施工までに間に合わないという相談も多々あります。
度重なる法改正も代行業者を選ぶメリットと言えます。2025年の改正実施を目前に控えていますが、幾度となく法改正、基準、計算方法が見直されてきました。こうした変更や最新情報に通じている代行業者に委託するのは、やはり時間とコスト削減によい方法と言えます。
おわりに
長年省エネ計算を行ってきた建築士として最後に正直な感想をコメントしたいと思います。やはり2024年~2025年問題になるのは、住宅を扱う設計事務所さまではないかと思います。省エネ適判(適合判定)をクリアしなければ着工できません。今までの業務に加えて、省エネ計算の届出を行う業務の圧迫、この部分は大きな悩みになるのではないかと考えています。
正直なところ、戸建て住宅の省エネ計算(標準ルート)はやることが多くて、個人で行うのはあまりおすすめできません。省エネ計算を代行している業者の間でも、戸建住宅の価格はまちまちのようです。共同住宅や店舗など非住宅施設と異なり施主さまが個人の場合もあり、単価を上げづらいです。
RIGHTSUN COPORATIONでは、これまで一案件、一案件ごとに丁寧に代行担当してきました。設計の変更やご相談・ご提案に真摯に向き合い、人と人のつながりを大切に丁寧に行ってきました。これからもよろしくお願いいたします。







