建築から数十年(30年以上)経っていても、新築と競える住宅に改修する。このリノベーション事業は建築設計の一つのチャレンジです。一般的に、古い木造住宅は、内壁や天井で細かく区切られていて、ひとつひとつの空間が狭い事が多いようです。省エネ計算はどのようにリノベーションに貢献するでしょうか。

断熱性能が設計に自由を

窓を小さくして外壁を大きくする。これは簡単な断熱性能UPです。しかしそれを追求すると建築本来の設計の自由度を下げてしまいます。例えるなら魔法瓶の水筒のようです。ガチガチに断熱材で周りを囲ってお茶の熱量を保ちますが、中は見えないので楽しめません。

省エネ計算をすると、「屋根・外壁・床・窓」という4要素だけでなく、「家全体の断熱性能」が分かります。窓を大きく取ってデザイン性を大切にしたいなら、屋根や床など他の部分で補うことができるのです。いうならば、ガラスのコップのようです。フタや底をしっかり断熱して、かつ二重ガラス(空気層)のコップは十分に熱量を保ちながら、中も見て楽しめます。(飲む時はフタを取りましょう)

省エネ計算をすると家全体の断熱性能が数値化されるので、デザインや空間を重視しながら、快適で過ごしやすい空間を提供できます。

古民家リノベーションと省エネ計算

木造住宅の一つの特徴として、一つ一つの空間の狭さがあります。構造上広い空間を作るのを苦手としていたというのも理由かもしれません。また工務店(大工さん)の経験で安全側を取った結果、広い空間が狭められたのかもしれません。

現代では木造も構造計算によって広い空間を作り出せるようになってきました。窓も自由に大きくして光を十分に取り入れた開放的な空間もデザインの一つとされています。

そうした古い民家をリノベーションする際、構造計算をして空間の安全とデザインを両立させるように、省エネ計算をすると、空間の快適性とデザインを両立させることができるようになるのです。

実際に使用される仕様

「アルミサッシに複層ガラスを入れておけばいいだろう」、「屋根はグラスウール100mmで」というざっくりした考えで設計すると、家の断熱性能は期待できません。建築して引き渡したあとで「夜が冷えてかなり寒い」というクレームが来てからでは対応が遅すぎます。

省エネ計算をすると、家全体の断熱性能が数値化できるので、建築主が住みだした後の生活をイメージできます。

実際に使用される仕様ですが、例えば開口部は寒冷地でなくても「樹脂サッシ+トリプルガラス」を選ばれることもあるようです。サッシのコストというイニシャルコストだけではなく、空調設備などのランニングコストを考慮して、初期投資するのはかなり賢明なアプローチとなりえます。実際に使用される仕様を下記に記しておきます。

 

屋根

高性能グラスウール@105+115
硬質ウレタンフォーム吹付@240 等

外壁

高性能グラスウール@105
吹込セルローズファイバー@105 等

開口部 樹脂サッシAPW330+Low-eトリプルガラス
樹脂サッシAPW430+Low-eトリプルガラス
アルミ樹脂複合サーモスX+Low-e複層ガラス 等

ここに挙げさせていただいたのは一例ですが、様々な断熱材やサッシを使った時に、どのような空間になるのか、省エネ計算をすると一目瞭然です。

デザインと省エネ

設計が完成してから省エネ計算を依頼されることもありますが、最近は設計段階で(つまり断熱材を選ぶ前から)ご相談を受けるケースも多くなりました。省エネ計算では、比較的自由にそうした使用する材料の変更が可能です。ライトサンでは「この部分の窓を1枚複層ガラスにすると、どうなりますか?」といったご相談も自由にしていただけます。